

随分と間が空いてしまいましたが、獣医療における最先端治療その5をお届けいたします。
〜獣医学でも最先端治療を〜
「幹細胞治療を実施した脊髄損傷症例」 今回お話します幹細胞治療は、まさに「再生医療」です。怪我や病気によって失われた機能を「再生」させることができるようになるのです。これまでにも人工心臓や人工関節など、代替させる「モノ」はありましたが、それらは生体にとってすべて「異物」であり、拒絶の対象でした。
臓器移植に関しても同様で、一卵性双生児間などの例外を除き、生涯に渡り免疫抑制剤や定期的な検査が必要不可欠であることはご存じの通りかと思います。 そこへ新たな光をもたらしたのが、幹細胞でした。 さまざまな組織に分化する能力を持つ幹細胞。胚性幹細胞(Embryonic Stem cells:ES細胞)は受精卵から得られ、その全能性に大きな期待が寄せられますが、倫理的な問題が大きく、またがん化のリスクもあるため、現状では現実的ではありません。
また、受精卵ではなく体細胞由来の人工多能性幹細胞(induced Pluripotent Stem cells:iPS細胞)の開発は、倫理的問題はクリアできたものの、がん化のリスクが高く、また培養に時間がかかるため、こちらも実用化までには至ってはおりません。
そこで注目を浴びるのが、体性幹細胞、主に骨髄液に含まれる骨髄幹細胞や皮下脂肪に含まれる脂肪幹細胞です。ES細胞やiPS細胞ほどの分化能はありませんが、体細胞由来ということでもちろん倫理面はクリアできていますし、自己の細胞ですから拒絶反応もありません。また、1990年後半からヒト医療でも実際に臨床応用されています。
また近年、脂肪組織の中に幹細胞が骨髄に比べ高い比率で含まれていることが分かり、骨髄よりも採取が容易であることから、特に注目されています。