2011年05月16日

獣医療における最先端治療B

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今日は、3回目です。         

  
「獣医学でも最先端治療を」
 「免疫細胞治療「CAT」を実施した不完全切除の乳腺がん症例」〜   

 今回は、犬の乳腺腫瘍(不完全切除)に免疫細胞治療を施した症例をご紹介いたします。犬の乳腺腫瘍は、未避妊のメスで最も多く認められる腫瘍として知られ、日常診療で遭遇する頻度の高い腫瘍性疾患のひとつです。
 この症例で用いられた免疫細胞治療は「活性化リンパ球療法(CD3 Activated T cellsCAT療法)」と呼ばれ、患者から採取した血液を遠心分離によりリンパ球を分離し、正常T細胞を特異的に活性化させる専用培地にて2週間ほど培養を行い、T細胞を増殖(約1,000倍)・活性化させ、静脈点滴で患者の体内に戻す、というものです。CAT療法は、大きな腫瘍を小さくするという効果よりも、むしろ全体的な免疫力の底上げを誘導し、免疫力の上昇によって腫瘍細胞を攻撃する、という効果が期待できます。
 
この症例では、腫瘍の進行を遅らせるため、そしてQ.O.L.Quality Of Life)の維持を目的として、CAT療法単独の治療が行われました。術後約70日頃から同約220日頃までの間、計6回のCAT療法が実施され、同約280日頃の検査では「全身状態は極めて良好で、局所再発や遠隔転移は認められなかった」そうです。 その間、自宅にて良好なQ.O.L.の維持が認められました。ご家族の評価は、 ・生活状況は極めて良好・元気、食欲に問題なし・これまでの生活の中で、最も生活力に溢れている とのことでした。 その後、残念ながら術後約370日頃に再発・転移が認められ、同約380日頃に自宅で息を引き取ったそうです。

この症例は、チクサン出版社「CAP201012月号に詳しく紹介されています。 理想は腫瘍の完全消失でしょう。しかし、手術時の微小な取り残しや遠隔転移など、現実にはなかなか難しいことだと思います。今回ご紹介したCAT療法には、大きな腫瘍を消失させるほどの効果はありませんが、腫瘍の縮小や転移を防ぐ効果が期待できます。いわば、腫瘍との共存ですね。腫瘍の完全消失だけが「がんの治療」ではないのかもしれません。特筆すべきは免疫細胞療法を選択された多くの飼い主様から、従来のがん治療で低下したQ.O.L.が向上した、との声を頂けることかもしれません。 次回は、腫瘍を特異的に攻撃できる細胞治療についてお話しいたします。


posted by 動物病院開業研究会 at 19:08| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 各種の獣医療サービスの紹介 | 更新情報をチェックする
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